青焔会報 2006年4月号

 
   
展 示  
米山郁生
 
   

 グループ青焔展が始まった。第34回、一年に一回であるから34年、長い様で短い。展覧会の準備の問題も多々あるが、一年経つと記憶が薄れ又同じ失敗の繰り返しとなる。展示とは出品者への気遣いと共に鑑賞者への気遣いが必要となる。この機会にその考え方を記して今後の参考にして頂きたいと思う。

 先ず展覧会がどの様な目的で開催されるかによって展示の方法も変わる。グループ青焔展の場合、会員の作品発表が主目的である事は言う迄も無いが、それだけではなく、障害を持った人々と共にごく自然体の中で暖かく力強く、心の広がりを持ちたい。障害を持つという事は、その人々が弱く異なっているのではなく、我々の社会、文明が自然空間を破壊し、その犠牲の中に純粋であり、敏感である弱い人達を傷つけ障害を押し付けてゆく、それが実態であろう。彼等は文明発展、転換途上に於けるカナリアなのだ。そうした人達との一体感を持つ。更に子供達の中に共に生きる事をごく自然の事として体験してもらいたい。自分達の周囲の人達ばかりではなく、遠くスリランカの子供達の事象も他人の事としてではなく、同じ命を生きる者として感じてもらいたいという願いも重ねられている。それは心の広がりだけではなく、人間的な大きさ、広がりも創り上げていって欲しい。常に苦しんでいる人々に眼を向ける、それが自分自身を強く生きる事につながってゆくであろう。

 青焔展は大人と子供の作品が一体となって展示する。子供は大人の人達の作品を鑑賞する事により、より前向きに、又、身近に社会や家族、そして将来の有り様を感じるのではないか。実際にその答えが出ないとしても無意識の内にその気性の中に蓄えられてゆくものと思う。一方、大人の人が子供の作品を見て何も感じない事はあるまい。自由奔放な描線、色彩、構成、それらが画面全体に躍動する。まさに生の命の芸術なのだ。そうした作品に接する機会は一年の内に何度もあるまい。自己の作品の中の、形の中、型の中に嵌ってゆく作風を今一度見直すきっかけになれば大いなる稔りとなる。幼児や障害を持った子供達の作品の中には、終生芸術に携わった人達が晩年その集大成として発散する芸術と、殆んど変わらない作風に創り上げた作品もある。機会を得てお見せ出来ればと思う。

 この展覧会では描法も様々だ。日本画、洋画、水彩、水墨、パステル、はがき絵、現代美術、児童画、総ゆる分野の作品の交流。障害を持った人達と健常者、子供と大人、総ての人達が主役となって構成する。

 青焔展そのものが一つの作品である。鑑賞される方が会場に入り作品を見終えて会場を出る時、“あヽグループ青焔展 いい展覧会を見た”と感じて頂ける様な展覧会でなければならない。作品への情熱、力量は勿論であるが、同じ作品群であっても展示の仕方によって大きく異なる。そのいくつかを述べる。

 展示は一部の作品が良く見えるだけであってはならない。総ての作品が描けた以上に良く見えなければならない。その為には同じ題材、色彩の作品を並列してはならない。レベルは少し違った作品を並べる。強さ、大きさのバランスを考える。描かれた作品の中から醸し出される情熱、思想、気品をつかみ、その壁面、場の雰囲気を創る。展覧会場は5つの部屋、9つの区画の中に仕切られている。区画から区画へ移る時、鑑賞者がどの様な気持ちで見てゆくのかを考慮に入れる。会場から元の部屋に戻る時、自然に眼の中に入る作品に対して眼線の移り具合が自然体で心地良いものにする。鑑賞者が絵を見て動く動線と心や頭で感じてゆく変化の中に驚き、ドラマ、感動、等、心の動きを誘えると良い。

 額縁の高さは絵の中心部を鑑賞者の眼線の高さより少し下に合わせる。背は人様々であるから、鑑賞する大人の平均的身長約160cmから頭から眼球までの約10〜15cmを引いた床面から140cm〜150cm位が良い。眼線より上に上げると全部を真剣に見終えた時、首が疲れた状態になる。やヽ見下げた感じで見終えると疲れも程良い。壁面での作品の数、密度、大きさのバランスによっても変化するので140〜150cmの巾を見た。但し総ての作品を絵の中心に合わせると壁面全体がバラバラの感じになる。中心的な大きさの作品を一点選んでその下枠の線に全体を合わせる事になる。

 他の大、小異なる大きさの作品を並列させる時にはその中心点を合わせる。高さは部屋毎にバラバラにならない様各室共通になる様に心がける。2段がけの場合は下段の上枠の線と上段の下枠の線を基準にその枠の間隙を12〜15cmとりバランスを見る。壁面の中心に15cm程の空間が一直線にのび会場が引き締まった展示となる。3段がけも同様の考え方をする。額間の横の空間もその壁面と展示点数が決まった時点で公平に間隙をとる。但し大きな作品は間隙も大き目とする。

 一つ一つの壁で完結した画面をつくり、バランスを考える。中央部や両端に弱い絵を置くとその壁面は死ぬので、壁面を引き締める為両端には少し大きい作品、強い作品を並べる。常に会場全体と一壁面を相対的にバランスをとる。名札は下の作品は下部中央にはる。額から8cm程離し額の影がかからない様にする。上段の作品はあきの寸法を考え下枠の線に揃えて右横か右下にはる。ピンを止める時は名札上部の中央に少しずれていても会期中名札が傾いている事になる。

 展示中名札を作者の所に仕分けるが、作者も作品も知らない人がパズル合わせの様に作品を捜す事はロスがあまりにも大きい。今後、名札は展示前日迄に教室毎に分ける、各教室の人が共に描いている人の常に見ている作品を捜せばこれ迄の何分の一かの時間で処理する事が出来る。

 展示は常に時間内に終了出来ていない。時間内に終了する為に自分が何をすれば良いのかを考慮して頂きたい。展覧会開催中、受付はメンバー450名の代表としてお客様に対応している事を心して頂きたい。私語禁止、会釈、言葉遣い、お客様への受け答え、総てがグループ青焔の品格を表わす事になる。当番でなくても会場では常に曲がった名札や額縁を直したり、会場に落ちたゴミを拾ったりはごく自然に行為出来る様心がけたい。

 年毎に作品のレベルが向上している。お客様が口々に賛辞の声をかけて下さる。常に謙虚に対峙しより素晴らしい展覧会が出来る様、会員が一体となって邁進したいと思う。

 展覧会は作者全体の品格を示すものとなる。

 
   
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